【短編小説】サイコロ遊び(後編)

サイコロ

※この記事は物語を書いています。



※「【短編小説】サイコロ遊び(前編)」はこちら





4、人にはいろんな面がある

ぽじ「ちょっと待って!
テーブルは脚を下にして使っている。

でも、【台に乗せる、作業をする】といった役割から
解放されれば、テーブルの脚が上になっていても
問題ないわけで、テーブルは残りの5面を
自由に見せて表現することができるんだ。」

ほわ「だから、ずっとひっくり返したままで
遊んでればいいじゃない!」

ぽじ「人にもいろんな面がある。人前で見せる自分と、
家族や心許せる友達の前で出せる一面。

好きな人の前では好かれようとして、
自分の魅力が伝わる面を前面に出している。

サイコロのように、いつもと違う面を見せてもいいって思うのは、
相手との関係性に変化があってからこそなんだ。」

ほわ「人にはいろんな面があるって話すために、
わざわざテーブルをひっくり返したわけ?」

ぽじ「ずっと長くいると、お互いに素が出てくる。
お互いに違う面が出てしまうのだ。

相手の違う面を見て、【違うな。】って思って別れることもある。

逆に、素を知った上でより好きになることもある。
そうして、サイコロのように、自分のあらゆる面を
見せられる間柄になれた時、
【ずっと一緒にいたい。】って思えるんじゃないかな?」


ほわ「あらゆる面を見せられるっていうか…。

テーブルをひっくり返して熱弁している、
ぽじの新しい一面が見せられて、
ずっと困惑してるんですけど…。」




5、確実な一歩

ぽじ「ただ、無理に自分の全てを
出そうとしなくてもいい。

人間だ方から、邪念のようなところや、
隠したいところだってある。

完全にクリアに見えなくても、
幸せを見つけることができる。」


ほわ「ぽじも今のこのぶっとんだ言動、
無理に出さなくて良かったんじゃないの…。」


ぽじ「すごろくでサイコロを振る時、
5や6の大きい目を出したくなる。
その方が早くゴールに着けるから。

でも、人生のすごろくは、
そんな軽快に進んではくれない。

自分1人ならまだしも、
2人で強引に前に進めば、
その関係は壊れてしまうかもしれない。

1の目が出て、一歩しか進めなくても、
その確実な一歩が大事だったんだ。

1の目は紅白の色。

【おめでたい!】、【おめでとう!】って、
みんなが祝福してくれるよ。」


ほわ「確実な一歩?みんなが祝福??
どういうこと???」


ぽじ「このテーブル、
普段は6の目が出ていると思ってるんだ。

サイコロは、6の目の裏は1の場合が多い。

だから、テーブルをひっくり返して、
1の目を出してみた。

紅白のように、みんなからお祝いしてもらえるように、
そして、俺らの確実な1歩が踏み出せるようにね。」


ほわ「私たちの確実な1歩??
えっ、それって、まさか?!」


ぽじ「1マス先にあるのは、
このテーブルを元に戻して、
テーブルで紙に名前を書いてハンコを押すことなのさ。

大丈夫!夜になっても、市役所では届出ができるんだよ。」


ほわ「ありがとう…。一緒にいたいという気持ちは、
サイコロのようにコロコロ転がっていかないから
安心してね。」


ほわ(こんなプロポーズの仕方が
あっただなんて!)



〜完〜


※「【短編小説】サイコロ遊び(前編)」はこちら


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