※この記事は物語を書いています。
【登場人物】
ほわ:普段はほんわかした性格であり、時にはネガティブになることもある。パートナーのぽじの斜め上をいった言動に困惑したり反発することもある。
ぽじ:ほわのパートナー。楽観的な性格で、物事をポジティブに解釈する。言動がぶっとんでるように思えることも多いが、実は、緻密な考察をしているのかも?
【短編小説】靴飛ばし
1、スーパーまで歩く
ほわ「いつ車で5分で行っているスーパー、
歩いて行ってもそこまで時間かからなかったね。」
ぽじ「このくらいの距離なら、
小学校の頃の登下校で毎日往復していたさ。」
ほわ「たしかに、子どもの頃はよく歩いてたかも。」
ぽじ「大人になると効率性ばかり考えて、
歩くという選択肢がなくなってしまうのさ。」
ほわ「あれ。いつも車で行く時に見かける公園あるよ。
せっかくだから、公園の中を通ってみようよ。」
ぽじ「そうしよう。」
2、靴飛ばしの思い出
ほわ「けっこう子ども達、公園で遊んでるんだね。
小さい頃は、よくブランコに乗って遊んでたわ。」
ぽじ「ブランコに乗ったら、その勢いを利用して、
靴を飛ばして遊んでたよ。」
ほわ「そう言われてみると、
ブランコで靴飛ばす人いたね!
【明日天気になぁれ!】って靴飛ばして、
【明日は晴れだー!】とか言ったりしてね。」
ぽじ「そうだね。飛ばした靴の向きを見て、
晴れとか雨とか言ってたけど、
次の日の天気が本当に
その占いのとおりだったかどうか覚えてないよ。」
ほわ「遊びでやってるから、靴飛ばしで出た明日の天気予報も
すぐ忘れてしまうものね。」
3、ほわのスリッパ全部飛ばし
ほわ「帰ってきたね。おやつでも食べよう。」
ぽじ「今日はとんがりコーン買ってないよ。」
ほわ「何飲む?ドーナッツ買ってきたから食べよ!」
ぽじ「雨だったかー。もう1回!」
ほわ「って、何やってるの?」
ぽじ「晴れ・・・。晴れ・・・。・・・あぁ!
3回目にして雨かぁ!」
ほわ(ぽじのぶっとんだことがまた始まったんだな・・・。)
ほわ「ちょっと!来客用のスリッパまで使って、
玄関スリッパだらけじゃん!」
ぽじ「全部のスリッパが晴れになるには、
足の振り上げる角度やスピードを
均一にしないといけないのだ!」
ほわ「靴飛ばしの話をしたから、
やってみたくなったの?」
ぽじ「あ!ほわの履いてるスリッパも貸してくれ!
玄関にある全てのスリッパを晴れにしてみせる!」
ほわ「どこで変なスイッチ入ったのよ!
おやつ食べるんだから、スリッパ片付けてよ!」
ぽじ「スリッパはまだ戻りたくないと言っているよ。
スリッパからしてみても、晴れの向きで着地して、
ちゃんとカッコイイとこ決めたいんだよ。」
4、スリッパ飛ばしの隠された意味とは?
ほわ「はぁ?!だったら玄関でずっと
スリッパと仲良く会話して遊んでれば?
せっかく、買ってきたドーナッツ一緒に食べようと
思ったのに。
そこで1人で勝手にやってなよ!」
ぽじ「ちょっと待って!
スリッパ飛ばしは、家の中で人の目を気にせずできるんだ。
【大人版の明日天気になぁれ!】と言ってもよい。
靴飛ばしは本来、明日の天気を占う。
晴れか雨か、運を天に任せている。
でも、大人になったら、
自分の選んだものを他人まかせにしては、
自分の本当の気持ちを見失ってしまうんだ!」
ほわ「・・・。大人になったら靴もスリッパも
そうそう飛ばさないと思うけど?」
ぽじ「今ここにスリッパが5組ある。
つまり10個のスリッパである。
スリッパ飛ばしの結果が晴れか雨の2通りであれば、
1個のスリッパでは晴れが出る確率は2分の1。
10個連続で晴れが出るには、2分の1が10回になる。
計算すると、1024分の1の確率だ。
10個のスリッパを全部晴れにするには、
計算上、最大で1024回チャレンジする必要があるのだ。」
ほわ「・・・。途方のないチャレンジってことは
伝わったけど・・・。
大人版はそんなストイックな遊ぶなわけ?」
ぽじ「1024分の1なら、まずやらないだろう。
大人になると効率性を求めるから、
それを楽しもうとは思わない。
ここで今、敢えてチャレンジしているのは、
自分の道を自分の力で切り開いていきたいからさ。」
ほわ「ん・・・???」
ぽじ「占ってもらって、それを参考にして
充実した人生が送れたら、
それはそれでいいだろう。
ただ、もし、人に言われたことや、
占い結果に頼りきって、
自分の道を選んでしまうと、
本当の自分の歩みたい道を選べないことがある。
間違った道を選んでしまった場合、
【あの人が言ったからだ!】、
【あの統計結果を信じたばかりに!】って、
人のせいにしてしまう。
靴飛ばしなら、遊び感覚で楽しいが、
自分の歩む道は自分で責任を持って、
自分が本当に歩みたい道を選べるのが
幸せなんじゃないかな?」
ほわ「・・・。スリッパ飛ばしから
人生論みたいな話になってきたけど?
じゃあ、ぽじはどんな道を
選ぼうとしているっていうのよ?!」
ぽじ「今ここでスリッパ飛ばしをしているのは、
絶対に選びたい道があるからなんだ。
人生に絶対はない。
それでも、より100%に近づくように、
自分にできることを考えてチャレンジしている。
人生は一度きりだが、
スリッパ飛ばしは1024回やったっていい。
この道は自分1人でなく、2人で選ぶものだから、
同じ道を歩んでもらえるまで何回だってチャレンジするさ。
【同じ道を歩んでほしい。】って言った時、
相手はイエスと言うかノーと言うかの2通りだ。
でも、そのチャレンジ回数は、誰が一度きりと決めたんだ?
同じ道を歩んでくれるまで、何度だってチャレンジする。
2人で幸せな人生を歩んでいきたいから。
それに比べたら、
スリッパ飛ばしの1024回なんて少ないものだよ。
ほわ「2人で幸せな人生を歩んでいきたい??
え・・・。それって、まさか???」
ぽじ「スリッパ全部晴れのように、
カッコ良く決められなくても、
雲ひとつない快晴で明るい毎日を過ごしていこうね!」
ほわ「ありがとう・・・。
スリッパ飛ばし、1024回もやらなくても、
1回やればいいんだよ。
雨になったスリッパは、全部晴れになるように
ひっくり返してあげる。
だって、私だって、
絶対に同じ道を歩んでいきたいんだから。」
ほわ(こんなプロポーズの仕方が
あっただなんて!!)