【短編小説】テッシュカバー


※この記事は、物語を描いています。


【登場人物】

•ほわ:普段はほんわかした性格であり、時にはネガティブになることもある。パートナーのぽじの斜め上をいった言動に困惑したり反発することもある。

•ぽじ:ほわのパートナー。楽観的な性格で、物事をポジティブに解釈する。言動がぶっとんでるように思えることも多いが、実は、緻密な考察をしているのかも?



【タイトル】ティッシュカバー

ほわ「あれ!ティッシュが終わっちゃった。
まだ替えはあったかな?」

ぽじ「まだ少しあったよ。
後でティッシュボックス買ってくるよ。」

ほわ「ありがとう。
今度の土曜日が紙製品10%引きになるから、
その時に買ってきてもらえるかな?」

ぽじ「わかったよ。
ティッシュボックス5個入りの
やつだよね。
そしたら、
ティッシュカバーも5つ買ってくるよ。」

ほわ「えっ?今使ってるティッシュカバーが
あるからカバーは買わなくていいよ。」

ぽじ「いや、ティッシュボックス5個を
買うんだから、買ってくるティッシュカバーは
5つで合っているよ。」

ほわ「って、枚数の問題じゃなくて…。
1つしか部屋なくてティッシュボックスは
1個置いておけば十分なんですけど?

だから、高かったけど、
お気に入りのティッシュカバーを
1つ買って使ってるから、
カバーはしばらく要らないのよ!」

ぽじ「ティッシュを替えるたびに、
新しいティッシュカバーになってたら、
おもしろいと思わないかい?」

ほわ(………イライラ…。)

ぽじ「そもそも、ティッシュカバーに
中身を入れなくてもいいんじゃないかな?

お気に入りのカバーと、
これから買ってくる
5枚のカバー。全部で6枚。

カバー6枚が部屋に置いてあれば、
ティッシュを使いたい時、
中身の入っているカバーを
選べる確率は6分の1だね!」

ほわ「もういい加減にしてよ!!

中身入ってないカバーを部屋に置いて
何がおもしろいんじゃい!!

土曜日は自分でティッシュボックスを
買ってくるから、何もしないで!」

ぽじ「待って!

たしかに、家の中に置いている
ティッシュボックスが1つなら、
カバーは1つで事が足りる。

でも、それは、
[ティッシュカバーは
ティッシュボックスをカバーするもの]
って考えると1つで十分なだけで、
柔軟な発想で選択肢は
増えていくんじゃないかな?」

ほわ「ティッシュをカバーするから
ティッシュカバーでしょ!

他に何の使い道があるっていうの!」

ぽじ「ティッシュカバーは、
ピッタリとティッシュボックスを
包みこむことができる。

カバーが小さかったら入らないし、
大きいとダボダボして格好が悪い。

あまりにもピッタリと包めるものだから、
[ティッシュボックスを包むことしかできない。]
と、多くの人に認識されてしまったんだ。

本当は、
[ティッシュボックスを包むこともできる。]
ってなるはずなのに。」

ほわ「なんか、ティッシュカバー
について熱く語っているけど…。

それで、カバーをたくさん買って
どうしろっていうの?」

ぽじ「ティッシュカバーの大きさは、
これから先も変わらないかもしれないい。

でも、人々の生活は変わっていく。

1部屋しかない家から、
2部屋ある家に引っ越す。

1人では十分だった広さでも、
2人になれば、快適に思うサイズは
変わっていくだろう。

これからの長い人生、
家族が増えていくかもしれないし、
それによって、さらに大きな家に
引っ越すかもしれない。

そうすれば、ティッシュボックスはいくつも
置くようになるから、
その分、ティッシュカバーも使うだろう。

ほわ「2部屋ある家?
2人になれば??
それってまさか…???」

ぽじ「ティッシュかバーの他の使い道、
実は、何も思い浮かんでないんだ。

でも、そうやって考えるようになると
選択肢は増えていく。

この家に住むか?、
2部屋ある家に住むか?、
選択肢を増やしてもいいかな?

増やすといっても、
ティッシュカバーのように
6分の1ではないよ。

2分の1なんだ。

自分は2部屋あるの家を選んだから、
あとは、どちらにするか選んでほしい。

ほわ「2分の1?
それはちがうよ。

2分の2しかないよ。

だって、2人の生活を
私だって望んでるんだから!」

ほわ(こんなプロポーズのしかたが
あっただなんて!)

【さいごに】

ティッシュをカバーする以外の
ティッシュカバーの使い道を考えることは
なかなかないかもしれない。

この物語では、他に実用的な使い道は
思い浮かばないままであった。

ただ、他に方法はないか考えること、
選択肢を増やすことは
日々の生活でも長い人生でも
大切である。

ぽじ自身が選んだ道でも、
ほわは違う道を選ぶかもしれない。

自分で道を選び、歩んでいくのは難しい。

さらに、相手がどの道を選ぶのかは
わからないから、
誰かと一緒に歩むのは
もっと難しいかもしれない。

この物語では、
ぽじのぶっとんだ言動でありながらも、
自分の言葉でほわへの想いを伝えた。

そして、それがほわに伝わったからこそ、
2人が望んだ道が
一緒になったのだと思われる。



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