【短編小説】朝マック

朝マック

ポテト揚がりましたよ。

※この記事は物語を書いています。

【登場人物】

•ほわ:普段はほんわかした性格であり、
時にはネガティブになることもある。
パートナーのぽじの斜め上をいった言動に
困惑したり反発することもある。

•ぽじ:ほわのパートナー。楽観的な性格で、
物事をポジティブに解釈する。
言動がぶっとんでるように
思えることも多いが、
実は、緻密な考察をしているのかも?

タイトル【朝マック

ぽじ「朝マック、たまにはいいよね!」

ほわ「そうだね。こんな早い時間から
マックにいるの久々だわ。
それじゃあ、そろそろ行く?」

ぽじ「“行く?”ってどこに行くの?」

ほわ「特に決めてないけど、
どっか行こうよ。
10時になるからお店もやってるでしょ?
ショッピングモールとか近いから
とりあえず行こうよ!」

(テレレ♪ テレレ♪ テレレ♪ テレレ♪)

ぽじ「おっ!ポテト揚がったみたいだね。
今の音はフライヤーアラーム音って
いうんだってさ。」

ほわ「あっ、そう…。今日、LINEで
20%割引クーポンきてたから
洋服見に行きたいんだけど?」

ぽじ「しかも、多くの人が
“ポテトが揚がった時の音”
という認識だけど、
あの音はナゲットが揚がった時も
同じ音が鳴るという(笑)」

ほわ「話聞いてる?!ほしかった洋服が
売り切れちゃうかもだから、
もう出るよ!」

ぽじ「たとえ売り切れたとしても、
ポテトはいつでもアラーム音とともに
揚がってくるから心配ないよ。」

ほわ「は?そんなにポテトが好きなら
ポテト食べてれば?!置いていくよ!」

ぽじ「待って!今は朝マックの時間帯
だからハッシュポテトを揚げている。

つまり、フライドポテトと同じ
フライヤーアラーム音で揚がったのを
知らせてくれるんだ。

もうしばらくすれば、朝マックから
通常メニューに切り替わる。
それは、ハッシュポテトから
フライドポテトに切り替わる事を
意味する。

アラーム音は1日に何十回と同じ音で
知らせてくれるのに、
ハッシュポテトからフライドポテトに
切り替わるのを知らせてくれる音は
流れてこない。

切り替わった後も同じアラーム音だから、
いつ切り替わったか音だけ聞いても
わからないんだよ。」

ほわ「だから何だっていうの?!」

ぽじ「俺らは成人する時、
二十歳に誕生日を迎えると
成人になったと実感できる。

お酒が飲めるようになり、
お酒の味とともに成人を体感できる。

成人式で同じ成人の仲間が集まり、
成人した事を共有できる。
記念日や周りの人のおかげで、
未成年から成人に切り替わったと
感じられるチャンスが何度もある。

ただ、切り替わりを実感できない時もある。
それは、カレンダーや仲間が
教えてくれないからなのか?

そうしたアラーム音が流れないのが
原因かもしれないが、アラーム音のない
静かな何もない日の方が、本当の意味で
先に進めるチャンスだと思うんだ。」

ほわ「ポテトから成人式って…。ずいぶん話が飛んでいるけど…。」

ぽじ「人生の節目でよく言うのが、
入学、就職、結婚、出産。これって、
入学式や入社式、結婚式に出産祝いと
節目を実感できるイベントがあるよね。

ただ、それって、絶え間なく続いていく
人生の通過点の一つにしか
すぎないんだよね。

受験勉強で偏差値が合格圏内に
入った時も、これもまた一つの
通過点なんだよ。
でも、合格圏内に入った事よりも
合格発表、入学式の方が印象に残るし、
周りも祝福してくれる。

何が言いたいかというと、
わかりやすいイベントだけでなく、
見えづらい転機や成長に気づき、
それを自信にして次に進めていく
原動力にしていくべきなんじゃないかな。

“今”という瞬間は良い時も悪い時も
モノにできれば、幸せを感じる事が
できると思うんだ!」

ほわ「・・・。何が言いたいか
わからないよ!
結局どういう事?!」

ぽじ「今までは、年齢とか、
親に言われたからとか、
友人に先を越されたとか、
自分自身で無意識に生み出した
“アラーム音”に焦っていた。

先に進めなければならない、
進めるべきだと、そう思い込んで
自分を言い聞かせていた。

でも、アラーム音に頼るばかりで、
自分自身の気持ちが追いついてなかった。
空っぽだった。

自分は本当はどうしたいのか?
俺の…、いや、俺ら2人の
本当の気持ちはどうなのか。

今、この瞬間の気持ち。
合格圏内に入ったかどうかは
俺ら2人で決めれば良かったんだ。」

ほわ「えっ…。2人って…?
それって、まさか…?」

ぽじ「今日、LINEで新規開店の
お知らせがきたよ。
割引クーポンはなかったけど、
名前と日付を刻んでくれるんだ。

アラーム音はないけど、
ダイヤモンドの輝き、
何よりも俺の想いが、
幸せ者だと実感できるように
気づかせてあげるからね。」

ほわ「ありがとう…。
フライドポテトに切り替わっても、
その想いは揚げたてのまま
冷まさないでね。」

ほわ(こんなプロポーズのしかたが
あっただなんて!)

【さいごに】

「今が大切な時期なんだから勉強しなさい。
がんばりなさい。」

こんなふうに言われたことはないだろうか?

受験、就職など、人生のライフイベントで
大事な時期と言われている。

この物語にもあったように、
周りから「大事な時期」と言われる時も、
人生の通過点である。

その通過点と通過点が繋がって、
日々の生活がある。

通過点を通過する時、

周りや時間に流されて通過してはいないだろうか?

それとも、自分の時間軸を持って、
自分の足で踏み出して通過しているだろうか?

1日1日を、今この瞬間を大事にして生きている人は、
日々の生活をより充実したものになるだろう。

今日も明日も、楽しいと思える日にしていこう。


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