扇風機のスイッチを入れると、風が全然来ない。
扇風機の正面にいるのに、こっちを向いてくれないのだ。
扇風機は右側に目一杯ひねり、今度は反対方向へ回り出す。
これで風がやってくると思っていたら、正面を向く前に扇風機の動きが止まる。
そして、虚しいことに、また右側に目一杯ひねり出していった。
こうして、一生、扇風機の風は来なかったのだ。
これは、長年使った古い扇風機に出てくる現象なのかもしれない。
新品の頃は、左右均等に扇風機の首が回っていた。
もちろん、正面に入れば心地よい風が適度に吹いてくるのだ。
首を振る角度を調節した場合でも、例えば45度に設定すれば、
右に45度回った後、今度は反対方向に周り、左に45度回るのだ。
右45度の、左45度。
この当たり前だと思っていた扇風機の構造が、長年使うことによって見事に裏切られるのである。
扇風機は右側の範囲でしか回らない。
「それならば!」と思ってやってみるのが、その右側の範囲に自分が来るように扇風機を動かすこと。
これで、右側の範囲で回らなくても、その範囲の先には自分がいる。
これで解決!・・・、したかのように思われた。
だが、悲しいかな。そうはいかなかった。
なんと、今度は左側の範囲でしか回らなくなったのだ。
「どうして・・・。」
室内の熱気とともに、ミステリーと絶望が包み込む。
この時はまだわからなかった。
扇風機を時計回りに回転するように動かした時、その反動で扇風機の首は左に回り、これが原因で扇風機の回る範囲が右側から左側へと変わったことを。
右側しか風が来ないから時計回りに回転させる。
↓↓↓
首が左に回り、左側しか風が来なくなる。
↓↓↓
左側しか風が来ないから反時計回りに回転させる。
↓↓↓
首が右に回り、右側しか風が来なくなる。
こうした負のループに陥り、改善しようとすればするほど、扇風機に振り回されてしまう始末に。
言うことを聞かない扇風機。
首が回らないように固定するか、風が来ている方に自分が動くしかないようである。