【第2話】ドロバチの子が巣立ったかわからない春に


去年の夏、ベランダの一角にドロバチの巣がつくられていることを発見した。




ドロバチについて調べてみると、次のようなことがわかった。



・ドロバチは比較的おとなしい性格

・ドロバチの巣には卵を1つ産み付けて、そこで誕生したドロバチの子が巣の中で育っていく。

・春になると成虫になったドロバチの子が巣の外に出て旅立っていく。




他の種類のハチのように巣の中に大量なハチはいないし(一匹だけ)、
おとなしい性格だから、こちらが何もしなければ襲われる可能性も少ない。



そこで、ベランダにできたドロバチの巣は、
春になってドロバチの子が巣立つまで見守ることにした。




※第1話、第3話の記事はこちら↓↓↓。




ドロバチの巣を見つけた頃は、親バチが巣を出たり入ったりしている光景を何度も見ていた。


巣に小さな穴があると、

「今は親バチが子のために巣を出たり入ったりしているんだな!」

とわかった。


また、巣にあった小さな穴が泥で埋められていると、

「今日の親バチのお仕事は終わりだな。外敵が侵入しないように、巣を出入りできる小さな穴を泥で塞いでいるものな!」

と、これまたわかるのだ。




しかし、ある日から、巣にあった小さな穴は泥で塞がることなく、
ずっと穴が開いたままになっていた。


「これは、親バチが巣を出入りするために穴を開けたけど、
その親バチが巣の外で何かあって穴を塞ぐことができないのでは・・・?」

と、自分なりに推測していた。



来る日も来る日も、ドロバチの巣の穴は開いたままであった。



そうして、秋になり、冬になり、
そして、ようやく春が来た。


もう十分温かい気候だから、
通常であれば巣の中にいる子は成虫となって巣立っていく。


巣に穴を開けないとドロバチの子は巣の外へ出られないから、

巣に穴が開くと巣立ったのがわかるのだ。





だが、今回は1つ問題がある。


それは、素手に巣に穴が開いたままになっているから、

  • 巣の中にドロバチの子がまだいるのか?
  • 既に巣立ったのか?



このどちらかが巣を見てもわからないのだ。


巣の中を探ればわかるのだが、
まだ巣の中にドロバチの子がいるかもしれないし・・・。




こうして今日もベランダにあるドロバチの巣を見て、
今日も巣に穴は開いたままで、
今日も「ドロバチの子はまだいるのか巣立ったのか?」と心に思う。


そんな春である。


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