【短編小説】ダブルチーズバーガー(後編)


※この記事は物語を書いています。

(前編の続きになります。)

※前編はこちら





5、目の前の幸せをつかめているか?

ポジ「ちょっと待って!
ダブルチーズバーガーは、ハンバーグが2枚入っていて、
そのボリューム感が魅力だけど、
それを目でしっかり見て確認することはしないんだ。」



ほわ「・・・。ハンバーガーの話まだ続けるの?!」



ポジ「たしかに、食べる時にはハンバーガーを横から見るから、
2枚重なったハンバーグを見ることはできる。

でも、上からも下からも見えなくて、
側面からしかハンバーグは見えないんだ。


これがもしハンバーグ定食で、
ハンバーグ2枚が鉄板に乗っていたら、
あらゆる角度からハンバーグを見て堪能できる。

ハンバーグにナイフを入れながら、
食事中も2枚のハンバーグを口に入れて、
幸福感に満たされるだろう。

それなのに、ダブルチーズバーガーは、
食べ始めから食べ終わりまで、
側面しか見ていない。

それって、幸せ目の前にあることで満足してるだけで、
本当は幸せをつかみきれてないんだよ。」





6、ハンバーグ1枚から生まれる幸せ

ほわ「これ聞いて理解できた人は0人だと思うけど・・・。
ポジがハンバーグ1枚だけ取り除いたのが関係してくるわけ?」



ポジ「パンに挟まれたポジションに君臨するはずだったハンバーグ。
そのハンバーグ1枚だけは我が家にテイクアウトされる。

そして、お夕飯のメインディッシュとなるわけだ。

これで、ハンバーグは脚光を浴びることができるのだ。

パンに挟まれたままのハンバーグも、
チーズバーガーとして意味を成している。

ハンバーグが入ってなかったら、
ハンバーガーにならないからね。」



ほわ「というか、昼にハンバーガー食べたのに、
夕飯がハンバーグなのね・・・。」



ポジ「隣にいること、一緒にいること。
最初はこんなにも嬉しくて嬉しくてたまらないのに、
それが当たり前になって、嬉しい気持ちが薄れていく。

嫌いになってしまったのか?

そうではない。人間、何事にも慣れてくるのだ。

感動的なことも、2回、3回と続けば、
感動していない自分に気づいてしまう。



ハンバーグが2枚も入っているダブルチーズバーガー。
最初に食べた時は感動したと思うんだ。

あの分厚さ。
そして、ハンバーグが2枚重なった美しいフォルム。

それが、慣れてくると、
ダブルであることをろくに確認もせずに、
口に頬張っている。



でも、これからの人生、
一緒にいることが当たり前になって、

【まぁ幸せかな?】
なんて満足している気でいて、

2人の心が通ってないことにも
気づかずに過ごしているかもしれない。



もしそうなったら、
今日の夕飯のダブルチーズバーガーから取り出した
ハンバーグ1枚を食べたことを思い出してほしい。


今日の公園ランチだって、
かけがえのない幸せなひとときなんだ。

これが慣れてきて嬉しい気持ちがなくならないように、

何年、何十年経っても、言葉に出して伝えていくからね。」



ほわ「えっ、これって、まさか・・・。」



ポジ「お夕飯のハンバーグには、
2人でナイフを入れようね。

ケーキではないけど、
ハンバーグ入刀で、
初めての共同作業になるね。」



ほわ「ありがとう・・・。
ハンバーグ1枚だとお腹いっぱいにならないかもしれないけど、
心は幸せでいっぱいに満たされるわ。」


ほわ(こんなプロポーズの仕方があっただなんて!)



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